「ウルラの森」へようこそ!
今回は、南太平洋の「最後の楽園」から届いた、情熱と絆の物語を秘めた一杯を特集します。
ウルラの森の道具部屋の主・シティと、少し珍しい名前に興味津々のグリーンくんの会話を通して、
パプアニューギニアのコーヒー事情と、日本に縁の深い生産者「トンガップさん」の挑戦について深掘りしていきましょう!
こんにちは!ウルラの森のグリーンです。
今日は、シティが特別な豆を淹れると聞いて、道具部屋に遊びに来ました。

ねぇ、シティ。さっきから部屋中にすごく落ち着く香りが広がっていますね。どことなく、森の中にいるような……杉の木のような爽やかな香りです。
ミルを回す手を止め、シティさんが優しく微笑みます。

おっ、グリーン、鼻が利くね。これはパプアニューギニアの『ウィルトン農園 トンガップさん ウォッシュA』という豆だよ。パプアニューギニアはね、実はコーヒー通が最後に辿り着く『隠れた名産地』なんだ。特にこの豆は、ジャマイカの王様、ブルーマウンテンの血統を継いでいるんだよ。
今日は、多民族国家パプアニューギニアのコーヒー事情と、一人のリーダーが地域と共に作り上げる「希望のコーヒー」についてお届けします。
「最後の楽園」パプアニューギニア:知られざる野生のテロワール

パプアニューギニアって、確か「最後の楽園」といわれる熱帯の島国ですよね?どんなところでコーヒーが作られているんですか?

まさに『最後の聖域』だよ。標高1,500mを超える険しい山岳地帯には、手つかずの豊かな火山性土壌と、熱帯特有のたっぷりとした雨がある。コーヒーにとっては、まさに天国のような場所なんだ。
パプアニューギニア(PNG)は、オーストラリアの北側に位置する大きな島国。
800以上の言語を持つと言われる多民族国家で、手つかずの自然が今も色濃く残っています。
コーヒー栽培には、他国にはない大きな特徴があります。
ガーデン・コーヒー(庭先栽培): 大規模なプランテーションもありますが、主役は小さな村々の「庭」です。多くの家庭が自給自足の生活の中で、庭先にコーヒーの木を植えています
オーガニックに近い自然栽培: 厳しい自然環境ゆえに、近代的な化学肥料や農薬がほとんど普及していません。結果として、非常にピュアで大地のエネルギーを感じさせる野性味あふれる豆が育つのです。
ブルーマウンテンの苗木が拓いた「奇跡の歴史」

さっき言っていた『ブルーマウンテンの血統』って、どういうことですか?

1930年代、ジャマイカから最高級品として名高いブルーマウンテンの苗木がこの国に持ち込まれたのが始まりなんだ。それがパプアの高冷地で見事に定着して、今では本家ジャマイカをも凌ぐと言われるほど豊かな風味を蓄えるようになったんだよ。
世界的に病害に弱く希少となった「ティピカ種(ブルーマウンテンの原種)」が、この国では今も大切に守り続けられている。
まさに「ティピカ種の宝庫」とも言える環境なのです。
異色の経歴を持つ農園主:日本で博士号を取得した「トンガップさん」

『トンガップさん』って、なんだか日本人の名前みたいに呼びやすいですね。

実はね、農園主のウィリアム・トンガップさんは、日本とものすごく深い繋がりがある方なんだよ。
ウィルトン農園の主、トンガップさんの歩みはまさに規格外です。
日本への留学: 1996年から1999年まで日本で地政学を学びました。
再来日と博士号: 2004年に修士・博士号取得のため再び日本へ。2011年まで滞在していました。
ジワカ州の州知事に: 帰国後、新設されたジワカ州の州知事を2期10年務め、学校やクリニック、橋の整備に尽力しました。
現在はその経験を活かし、政治の舞台から「農園経営」へとフィールドを移し、地域の雇用創出に取り組んでいます。
地域と共に歩む「ウィルトン農園」:再生と雇用への挑戦
ジワカ州にあるウィルトン農園は、約300ha(東京ドーム約64個分!)という広大な敷地を持っています。


2024年に訪問した時は、ちょうど農園の再生中だった。長い間手入れがされていなかった場所を、地域の住民みんなで協力して整備していたんだよ。
トンガップさんのポリシーは、「地域住民全体で作り上げていきたい」というもの。
彼が村を移動するたびに住民が笑顔で話しかけてくる光景は、彼が単なるオーナーではなく、地域に寄り添うリーダーであることを物語っています。
【フレーバー解説】中深煎りで花開く、甘みとシダーの余韻
今回ご紹介する「ウォッシュド A」は、非常にクリーンで力強いポテンシャルを持つ豆。
焙煎度を上げるほどに、その魅力が深まっていきます。
●推奨焙煎度:中深煎り(シティ)〜深煎り(フルシティ)

(ゴクリ)……わぁ、美味しい! 最初にブラウンシュガーのような深い甘みが来て、その後にナッツのような香ばしさが追いかけてきます。そして、鼻から抜けるこの『シダー(杉)』の香りが……すごく落ち着きますね。

そうだね。この豆は中深煎り以上にすることで、甘みとボディがぐんと増すんだ。苦みもトゲがなくて、心地よい重厚さがあるだろう?
●味わいの三層構造:甘み・コク・香り
- 甘味(Brown sugar, Chocolat): 精製度の高いウォッシュドならではの、澄んだ甘みが特徴。カカオのようなビター感と合わさり、奥行きのある甘さを形作ります。
- コク(Nuts, Toast): 煎り進めることでトーストやダークチョコレートのような風味が出てきます。とろみのある口当たりが、満足感を高めてくれます。
- 香り(Ceder): この豆の象徴とも言えるのが、シダー(杉)のような爽やかで落ち着く香り。ほっと一息つきたいシーンにぴったりの「癒やしの余韻」です。
●シーンを選ばない万能なポテンシャル
深煎り(フルシティ)まで進めると、ボディ感がいっそう際立ち、コク深い一杯に仕上がります。
単体で楽しむのはもちろん、その安定感のある苦味を活かして、自作ブレンドの「ボディ・苦味担当」として活用するのもおすすめです。

ねぇ、シティ。これ、仕事が終わった後の読書タイムに最高ですね……。甘みの後にくるシダーの爽やかさが、頭をスッキリさせてくれる気がします!
シティ流:日常に寄り添う「深煎りトンガップ」抽出術
お湯の温度は「83℃〜85℃」: 苦味を角の取れた、丸い印象に仕上げます。
じっくり蒸らす: 30〜40秒しっかり。この時、シダーの香りが一番強く立ち上がります。
太めの湯線で短時間抽出: 後半は少し太めに注ぎ、雑味が出る前にスパッと終えるのがコツです。
まとめ:一杯のコーヒーが紡ぐ、日本とジワカ州の絆

トンガップさんが日本で学んで、今パプアニューギニアでみんなを笑顔にしている……。そう思うと、この一杯がもっと特別に感じます。

そうだね。コーヒーは単なる飲み物じゃない。誰かの挑戦を支え、地域の未来を形にする力があるんだ。この味を、ぜひ大切に味わってほしいな。
落ち着いた苦味と、森を感じる清々しい香り。
忙しい一日の終わりに、日本とパプアニューギニアを繋ぐこの一杯を、ぜひ手に取ってみてください。
ウルラの森では今回ご紹介した自家焙煎コーヒー豆を『ULULA COFFEE ROASTER』で販売しています。



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